明日ここにいる君へ
選手達はフィールドから離れて…、小さなボールを片手に、観客席側を…ゆっくりと歩いていた。

階段を降りて、通路の手摺から身を乗り出すサポーターや、少年達に混ざって。

私たちも…そこに立った。

「……七世、手ェ振れ。」

「え。どの人に?」

「………いーから!目立ってなんぼ!」

訳もわからぬままに、悠仁の指示に従って…
選手達に手を振ってみる。


「「……あ……。」」


一人の選手が…、こっちを見ている。

「マジか…。キーパーの岸本だ。」


次の瞬間……、

彼は…大きく腕を振って。

彼が持つボールを………こっちへと向かって解き放った。


「……うそっ……。」

飛んで…来る!



―――そう…、思っていたのに。

身構えた私の手に、何の感触もなくて。

代わりに…隣りにいたブルーのユニフォームを着た少年達が、小さいボールを抱えては…飛び跳ねて、喜びを爆発させていた。


「「………………。」」

呆然とする…悠仁と、私。


「……目線…絶対七世に来てたよなあ…。勘違い?」

「……うん。うぬぼれた…。」


「「…………ぷっ…」」

顔を見合わせて…、ついには二人で、吹き出してしまう。


「そんなモンだよなあ~、うん。どっちにしても、そんな構えじゃーいざ飛んで来ても、ナイスパンチング!相変わらずディフェンス上手いな。」

「思わず…防御姿勢とっちゃったし。」

「サインボールだったのに…、勿体ねー!」


悠仁が…、余りにもおかしそうに笑うから。

私も……つられてしまう。




「………ハハっ…、七世がすげー笑ってる。」

「……悪い?」

「ううん。嬉しい。」

「……………。」


「前に…言ったじゃん。アンタを笑わせてみたいって。」


「……言ったっけ。」

「ハイハイ、覚えてないっと。まーいーや、願いが1つ叶った。」




ねえ…、どうしてアンタが…そんなに嬉しそうなの?


「デートに誘った甲斐あったわ。」




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