明日ここにいる君へ
けれど、夢は……いつかは覚める。
「……七世。」
耳元で…悠仁の声。
吐息が触れて…くすぐったくて。
重い瞼を…開く。
「俺はここで降りるけど…、七世はまだ乗ってく?」
意地悪な笑顔を…浮かべて。
君は席を立つ。
「…………………。」
さっきもの可愛らしさは…どこに行ったのか。はたまた…ただの夢だったのか。
暫しその判断に…困ったけれど。
当たり前のように、差し延べられた手が。現実だって…教えてくれる。
「……置いて…行かないでよ。」
「………りょーかい。」
電車から降りた…構内は。
田舎町の夜を象徴するように…静かだった。
薄暗い…蛍光灯の光。
僅かに聴こえる…虫の音。
もう、今日が……終わろうとしている。
半歩後ろを歩いて。君の背中を…追っていく。
「デケーあくび。」
「…………!」
油断…していた。
開けていた口を…急いで手で覆って。
遅すぎな証拠隠滅を図る。
「違うよ。耳がおかしくなったから…、こうやって…」
「涙目んなってる。」
「……!」
「……いいよ、今さら。多少ガサツな所が七世のいいところ。」
「誉めてんの…、ソレ。」
「……う~ん………。あ、間違った。」
「………?」
「いいところっていうか…、俺の『ツボ』かな。ウン、きっとそう。そういう油断した顔は…俺だけが知ってればいい。」
「………バカ。」
「いーんだよ、バカでも。」
まだ…眠たさが残る…瞼の裏で。
映し出した君の姿を……、ハッキリと色濃く、脳裏に刻み込む。
幼い少年のような…屈託のない笑顔。
「……………あれ?」
「……?ん?どーした。」
「悠仁…、アンタ…。」
君の姿をこの目で映す度に…
キラキラと光輝くものと、ソレに…対抗するかのように、黒くトグロ巻く闇とが……同居している筈だった。
なのに。
「…………ない……。」
「……は?何が?」
そこに………あの影は、
忌み嫌った…あの、影が。
跡形もなく……消えさっていたのだ。
「……財布?それとも…、もしかして、家の鍵?」
私はブンブン、と首を振って。
君の隣りに…並ぶ。
「……何でもない。ちょっと…寝ぼけてただけ。」
「やっぱ眠いんじゃん。」
眉を下げて…、しょーもないって言う風に…君はやんわりと微笑んだ。