明日へのメモリー


 わたし達三人を乗せて車はどんどん走り、都内でも普段まったく馴染みのない区域へ入っていった。

 どこかの名士の広い敷地を囲んでずっと白塗りの塀《へい》が続いている。

 ぼんやり眺めていると、車が左右に開いた高い門をくぐって中に入って行った。

 これ、全部お庭なの?

 母と囁き合いながら周囲を注視する。

 敷き詰められた芝生やじゃり、情緒のある庭石や松の木、池が、まるでどこかの公園のように続いていた。

 ようやく正面にお屋敷が見えてくる。

 車から降りたわたし達は、どっしりと黒い瓦をいただいた、武家屋敷みたいな造りの館を眺めて圧倒された。


「こちらからお入りくださいませ」

 和服姿の女性が出てきて丁重に案内してくれる。わたし達はおそるおそる中に入っていった。

 豪華なふすまで仕切られた部屋から部屋を、ぐるっと囲んで続く廊下をかなり歩いて、やっと奥の間にたどり着く。

 通されたのはお茶の会ができそうな広い畳のお部屋だった。

 掛け軸と生け花の飾られた床の間を見て、まるでお殿様の部屋みたいだと思った。障子を開ければ、手入れの行き届いた中庭が見える。
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