欲しいけど言わないで

秘めた気持ち

「…理衣」

「んっ…」

「好きだ…」

「…………」


――――――

――――

―――



「北村部長、早く結婚しちゃえば良いじゃないですか!」

「そうですよ!まぁ、社内のアイドルが結婚って寂しい気もしますけど」

「ばーか。お前なんか最初から相手にされねーよ!」



会社の親睦会という名のただ飲むための口実としか思えない集まりの中、酔いが回り始めた男性社員が仲良さげな２人のカップルを囃し立てる。



「お前ら飲み過ぎじゃないか？」

「あ!部長話をはぐらかしましたね!ね、菜子ちゃんも早くプロポーズとかして欲しいよね!？」

「おい、なんでお前が決め付けるんだよ!？…思ってんの？」

「え？部長って意外に天然？」

「「あははは!!」」


…計算に決まってるでしょ。

笑いで包まれる店内の中、私はグラスを傾けながら、心の中で毒づく。


でも、多分私より腹黒いのは目の前で人の良さそうな顔をして笑う男だと思う。