鈍感ガールと偽王子


「ごめん美結、私これから明日までのレポート書かなきゃなんだ」


「あ、そうなの?じゃああたし帰るね」


「ごめんねせっかく来てくれたのに…。また今度、もっと王子の話聞かせてね」



そう言ってにっこり笑った里奈に、あたしは曖昧に笑みを返した。



だから、そんなすぐに進展できたら苦労しないんだって…。




「…とりあえず、椎葉くんには里奈とちゃんと仲直りできたお礼言う。あと、里奈も感謝してたよって伝えとくから」



「よろしく」



「ん。じゃあ、またね。レポート頑張って」



あたしはそう言って立ちあがると、里奈に見送られながら部屋を出た。



ちらっ、と時計を確認するといつの間にか夜の9時を過ぎていて、道理で寒いわけだ、とため息を吐いた。



吐き出された息が白く色を付けた。



もう、12月だもんね…。


そういえば、今年は里奈と一緒にクリスマスできないのか。


彼氏と過ごすよねそりゃあ…。


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