恋するキミの、愛しい秘めごと
「カンちゃんのは……?」
「……」
「カンちゃんも考えてたんでしょ!?」
バカみたい。
本当にバカみたい。
自分が蒔いた種なのに、この期に及んでカンちゃんに助けを求めようとするなんて。
だけどあれだって、何日も考えてやっと浮かんだ案だった。
その替わりの案なんて……。
私達のプレゼンは、一番最後。
質疑応答を入れて25分の発表で、それが間に9社。
お昼休憩を挟んだとしても、新しいものを考える時間は5時間程度しかない。
そんなの、無理に決まってる……。
縋るように瞳を見上げる私に、カンちゃんは小さく頭を振った。
「日和が考えろ」
「……っ」
まるで突き放すような言葉に、自分でも分かるくらいに表情が引きつる。
けれどカンちゃんが怒るのは当たり前だ。
あんなにも忙しい業務の合間を縫ってサポートしてくれていたのに、その全てが私のせいで無駄になったんだから。
自分の愚かさが悔しくて。
そんな資格なんてありもしないのに涙が零れそうになり、俯いた。
だけどカンちゃんは……。
「ヒヨ、責めてるんじゃないから泣くな」
私の沈みかけた心を掬い上げるみたいに、少し笑いながら柔らかい声でそう言った。
――責めてるんじゃない。
その一言にゆっくりと顔を上げると、目の前の彼の顔はやっぱり笑っていて……。
「……っ」
大きな手を私の後頭部に伸ばすと、驚いて声も出ない私を、そのまま自分の胸に引き寄せた。
「ヒヨ」
その声に言葉を返したいと思うのに。
「俺は、ヒヨのことを信じてる」
カンちゃんの香りが、強すぎる。
柔らかいお日様みたいな香りが強すぎるから……。
胸が痛くて、言葉に詰まってしまう。
だけどカンちゃんは、そんな私の頭のてっぺんに顎を乗せ、どこか楽しむみたいに口をガクガクとさせて、
「ここで逃げたら後悔するぞ」
私を落ち着かせるように、ゆっくり、柔らかい声で言葉を紡いだ。
それはすごく心地よくて、麻痺した頭の中にスーッと染み入るよう。
「俺もクライアントの方が片付いたら、すぐにサポートに回るから」
「……うん」
「ヒヨは新しい“ヒヨの企画”を考えてて」
「うん」
呼吸を整えてから顔を上げると、そこには緩やかに口角を上げて笑うカンちゃんがいて、私はその黒目がちな瞳を真っ直ぐ見つめて頷いた。