恋するキミの、愛しい秘めごと
後任者には、高幡さんも信頼を置くという彼の後輩を任命してくれたという事。
共同研究をする予定の東南海洋大学には、直接自分が出向いて事情を説明するという事。
カンちゃんにも、怖いけれどちゃんと自分で話をしてみるという事……。
その他にも、いくつかの今後の予定を話し合って彼の家を後にした。
知り合って、長いわけではない。
でもカンちゃんと一緒に、高幡さんとの時間を過ごしてきたせいか。
「やっぱりちょっと淋しいなー……」
まるで自分の師匠と離れ離れになってしまうような、微かな虚脱感さえ覚える私は、高幡さんの事が心底大好きだったのだろう。
とは言え、驚きすぎてどんなものかは聞きそびれたけれど――彼に長年の夢が叶うチャンスが訪れたのだから、悲しむのはやめて、素直に喜ぼう。
電車に乗り、会社に向かう帰り道。
窓から見える景色をぼんやりと眺めながら、そう思った。