スーツを着た悪魔【完結】

深青の言いたいことがまったくわからない。

まゆは首を傾げながら、彼を見上げる。



「よく、わかりません……」

「タイプとか」

「いえ……じゃあ、その……豪徳寺さんは」

「深青……呼び捨てでいい。あと、敬語じゃなくていい」



サークルのOBで、年上で、しかも今は雇い主の彼を呼び捨てにしろと言われても困ってしまうのだけれど、どうせ相手は豪徳寺深青だ。

自分勝手でわがままで、偉そうで、人に敬意を払わないタイプという、なんとも近づきたくない男だし……。言葉だけ敬意を払っても仕方ない。

勇気を振り絞って口を開いた。



「じゃあ……深青、は。どういう人がタイプなの?」

「美人で、スタイルがよくて、ベッドでの反応がいい女」

「――」



やっぱり最低……。

もう多くは尋ねまい。


まゆは決意して、深青とは反対側の窓の外を向く。


怒らせているのはわかるのだが、やっぱりからかいたくなる。

そんな彼女の反応を見て、深青は思わず口元をほころばせていた。





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