スーツを着た悪魔【完結】
遊園地にはすぐに到着した。
車から降りたまゆの大きなトートバッグを深青が取り上げ、重さを確かめるように持ち上げる。
「なに入ってるんだ、これ?」
「い、いろいろです……」
「ふぅん……行くぞ」
それ以上追及せず、スタスタと歩きはじめる深青の背中を思わず見つめるまゆ。
グリーンとホワイトのチェックのシャツにグレーのカットソーを重ね、ごつめのブーツをデニムに合わせた深青は、ごく普通のカジュアルスタイルなのに人目を引いた。
カップルで来ているハズの女の子ですらあからさまに深青に見とれ、彼氏に嫌そうな顔をされている。
本当はバッグの中にはお弁当が入ってるんだけど――私ったら、どうしてあんな人にお弁当を食べさせようなんて思ったんだろう。
遊園地で手作りお弁当なんて、絶対馬鹿にされる。
そもそもお口にあうとも思えないし。こっそり持って帰ったほうがいいかもしれない。
「まゆ」
名前を呼ばれて顔をあげると、メインゲートで深青が入園券を2枚手にしていた。