スーツを着た悪魔【完結】
そんなまゆの緊張をよそに、彼は入口からまゆの背後を周って、反対側のソファーへと向かう。
そしてギシッと、皮がきしむ音――
座った……?
彼の正体を確かめるため、まゆは勇気を振り絞り、ゆっくりと顔を上げ彼を盗み見る。
恐ろしく長い足
膝の間で組んだ繊細な指先
もう、たったそれだけで――まゆは苦しいくらいの目まいに襲われていた。
少し薄暗い部屋の中でも、そこだけ自然と発光するようなオーラをまとっていた。
ああ、やっぱり……。そうだ。『彼』だ。
豪徳寺深青(ごうとくじみさお)!
「豪徳寺さん、お仕事お忙しいんですね~」
「雑誌で見ましたよっ♪ 今一番成功している青年実業家だって!」
「――いえ。家業を継いだだけで、成功だなんておこがましいですよ」
物腰柔らかに、優雅に微笑む彼は、周囲にたっぷりと愛想を振りまきながら、その輝きを隠そうともしない。
けれどその瞳は本当は笑ってはいなくて……
何も変わらない――
昔と、少しも……