スーツを着た悪魔【完結】
彼の名前は豪徳寺深青。
千年続く旧家の出身で、政財界で「豪徳寺」の名を知らぬものはいない。
深青はその豪徳寺家の分家筆頭の御曹司だ。
両親の仕事の都合で人生の大半を海外で過ごし、その後飛び級で大学を卒業。
世界屈指のビジネススクールである『ロンドン・ビジネス・スクール』でMBAを取得し、20代前半で、両親の国『日本』へと帰ってきた。
当時、まゆは深青のあまりにもまぶしい経歴に、世の中にはこんな「エリート」と呼ばれる人がいるのだと、唖然としたものだ。
そしてまゆが深青を知ったのは、短大の友人に「一人じゃ心細いから」と半ば強引に参加させられた、名門私立大学のサークルで……
深青はその私立大学の幼稚園に通っていたという縁で、サークルの中心にOBとして在籍し、あでやかに咲き誇る花のような存在だった。
180センチを優に超える長身は鍛え上げられ、いつも邪魔そうに組んでいた長い手足を、シンプルで上質な服で包んでいた。
顔立ちはいたって端正。
無造作風にカットされた髪の奥の瞳の色は薄く、くっきりとした二重まぶたを囲むまつ毛は、頬に影が落ちるほど長い。
意思の強そうな高い鼻梁と、いつも微笑みを浮かべているような唇はほのかに赤く、妙に色っぽく見えた。