スーツを着た悪魔【完結】
みるみるうちにまゆの黒い瞳が潤んでいく。
そんな、悲しみに揺れる瞳を悲しい気持ちで見つめながら、深青はソファーから立ち上がるまゆを見上げた。
体は細かく震え、唇はきつくかみしめられている。
彼女の中で激しく何かが争っている。ぶつかり、拒絶反応を起こし、火花を散らしている。
今の自分は彼女に拒絶されていることも――痛いほど伝わってくる。
「だけど……選ぶのはお前だ」
選ぶのは私……?
ジッと自分を見つめる深青の真摯な表情に、まゆは目眩がした。
深青はずるい。
こんな風に優しくして、幸せをちょっとだけ味あわせて――
選ぶのはお前だって、言うのね……。
いつも強引なくせして――
ずるい!