スーツを着た悪魔【完結】
言われたとおり日傘を持ちビルの外に出る。
「あっつい……」
かんかんと照りつける太陽の眩しさに目を細めながら、日傘を差し歩き始めた。
梅雨はまだ空けていなかったが、7月に入り夏の気配はもうすぐそこだ。
日傘の影も濃く、アスファルトの照り返しも厳しくなり始めている。
夏は、嫌い……。
憂鬱になりながら、そっとため息を漏らす。
まゆは四季の中で、夏が一番嫌いだった。
なぜなら、両親が死んだのが八月だったからだ。
八月の空気や太陽が肌を焼く痛み、じっとりとした汗の感覚は、いやでも昔の記憶を揺さぶり、まゆの気持ちを暗くする。
急ぎ足で郵便局へと向かい、ひんやりとしたクーラーの感じに一息ついた後、Orlandoへの道を急いでいると――
「澤田さん」
と、背後から声を掛けられた。
「?」
いったい誰だろう。
振り返ると、向こうからスーツの長身の男が近づいてくるのが見える。