スーツを着た悪魔【完結】

好きな人が出来ました。

たったそれだけのことに、何を気負っているのだと人は笑うだろうか。

けれどまゆにはとても勇気のいることだった。



昔から、悠馬の期待を裏切るのが怖かった。

他人から愛される価値はないのはわかっていたし、それでもよかったけれど、悠馬の望む「澤田まゆ」から少しでも外れたら、もう自分を「肯定」してくれる人はいなくなるから。

そうしたらもう生きていけないから――

彼の機嫌を取るように、言葉や態度に気を付けてきたのだ。


だけど今は違う。

深青がいる。私を好きだと言ってくれる人がいる。


強く、誇らしい気持ちで胸がいっぱいだった。



彼の気持ちに少しでも応えたい。

だからこそ自分の口でちゃんと言わなくちゃって思う。


悠ちゃんにわかってもらいたい……。



< 431 / 569 >

この作品をシェア

pagetop