スーツを着た悪魔【完結】
深青はテーブルの上に手を伸ばし、うつむくまゆの手の甲に、自分の手を重ねた。
「――俺が殴りたいから殴ったんだ」
手のひらにすっぽりと収まってしまう、小さな手。
深青は、今まで自分を守るだけ、抱きしめるだけで精一杯だったこの手に、違う幸せを見つけてやりたかった。
例えばそれは一輪の花だったり
大事な人の手だったり
たくさんの幸せを手にしてほしかった。
そのためにだったら、俺は何でもする……。
深青は決意を新たにし、言葉を続ける。
「あいつを社会的に制裁したいか? やろうと思えば出来る」
「っ……」
まゆはハッとしたように顔を上げ、プルプルと顔を横に振った。
「それは……いや……」
「そうか」
実際、警察に行ってもいいと深青は思っていたが、そうなると襲われたまゆも無関係ではいられない。