スーツを着た悪魔【完結】

深青はテーブルの上に手を伸ばし、うつむくまゆの手の甲に、自分の手を重ねた。



「――俺が殴りたいから殴ったんだ」



手のひらにすっぽりと収まってしまう、小さな手。

深青は、今まで自分を守るだけ、抱きしめるだけで精一杯だったこの手に、違う幸せを見つけてやりたかった。


例えばそれは一輪の花だったり
大事な人の手だったり

たくさんの幸せを手にしてほしかった。

そのためにだったら、俺は何でもする……。


深青は決意を新たにし、言葉を続ける。



「あいつを社会的に制裁したいか? やろうと思えば出来る」

「っ……」



まゆはハッとしたように顔を上げ、プルプルと顔を横に振った。



「それは……いや……」

「そうか」



実際、警察に行ってもいいと深青は思っていたが、そうなると襲われたまゆも無関係ではいられない。



< 527 / 569 >

この作品をシェア

pagetop