スーツを着た悪魔【完結】
「はっ……放して、くださっ……」
「駄目だ。まだ未散が見てる」
深青は暴れるまゆをしっかりと抱きしめたまま、未散に手を振り返す。
やたらはしゃいていた妹に嘘をついたのは悪い気がしたが、この場合は仕方ないだろう。
未散の姿が本当に消えたのを確認してから、腕の中のまゆを見下ろした。
「――まゆ」
「っ……」
「今から手を放すけど暴れたりするなよ。大声も出すな。今度また逃げようとしたら、もちろんすぐに捕まえて、死ぬほど恥ずかしい目に合わせるからな」
死ぬほど恥ずかしい目ってなに!?
「し、しませんっ……」
「よし」
深青が腕を緩めると、顔を真っ赤に染めたまゆが、ふらふらしながら、ソファーの上に積んであったクッションに、上半身を投げ出すようにしてうずめる。