塔の中の魔女
怒りまかせにエカテリーナが放ったのは、雷属性の魔法のひとつ、閃光だった。
攻撃魔法ではないので、塔が破壊されることも、使者が傷つくこともない。
しかし嚇しにはちょうどよかったようで。
金髪の青年は、足元に降り落ちた閃光に驚いて、
「うわっ」と、みっともなくも小さな悲鳴をあげながら、
派手な音を立てて階段から転がり落ちる。
不意打ちが上手くいったことにほくそ笑んで、エカテリーナはほんの少しだけ溜飲を下げた。
にんまりと微笑みを浮かべると、
宙に浮かぶ床と階段の隙間に身を滑り込ませる。
一階の冷たい石畳に寝転がっている青年の身体の上に、
ふわりと舞い降りて、馬乗りになった。
「な、なんだ!なんだ?」
青年の慌てふためいた様子に吹き出しそうになるのを堪え、
エカテリーナは澄まし顔を作る。
そうして緋色の瞳で、じっと青年を観察した。