塔の中の魔女




その場所へは、ひとりで行かなければならないと言われていた。


伝説の魔女が住む塔。


強い結界が張ってあり、

大国ゼルダンの猛攻にも、侵入を許さなかった小国ユダの僻地。





「本当にひとりで行かれるおつもりですか?」


側近のラッツェルが聞いた。


身支度を整え終えた若き十八歳の王、ロゼリンは、一瞬キョトンとした顔をして笑う。


「当たり前だろ。伝説じゃ、その魔女さんは外の世界にまったく興味がなくて、人を寄せつけないっていうじゃねぇか。
それなのに、大軍引き連れて押し掛けてみろ。
雷でも落とされかねないぞ」


「それは否定しませんが。
せめて、近くの村に駐屯することは叶いませんか?
自国内とはいえ、あなたをひとりで僻地へ行かせるのには抵抗があります」
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