夢の欠片



結局、あの日は父には会わずにマンションを後にした。


愛未さんとゆっくり話せたことは、父の真実を知るきっかけになって良かったと思う。


少なからず私を捨てて出ていったのではないかという思いが自分の中にあったのは確かだった。


だからそうではなかったという事実が、宝物のように感じる。


愛未さんに対しても恨む気持ちは一ミリもなかったし、今この時に彼女に出会えたことは有難いことなんじゃないかと思えた。


もし彼女がいなければ、私はいつまでも父を誤解していただろうし、再会した時もこんなにスムーズに打ち解けることは出来なかったんじゃないだろうか?


彼女のおかげで父も穏やかで優しく余裕ある態度で私に接してくれたような気がする。


いろんな思いを抱えて、この歳になるまで辛い思いもしたに違いない。


そんな二人がまた出会い、愛を育んで今が幸せなら、心から祝福したいと思った。


愛未さんは私が帰るその時まで、ずっとごめんなさい……と口にしていたけれど。


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