夢の欠片
「じゃあお袋が若い男と浮気して出ていったっていうのは?」


翔吾がそう尋ねると、お父さんは申し訳なさそうに答える。


「お前にまで出ていかれたくなくて、嘘をついたんだ……

だけど結局、お前は出ていった……

俺の嘘でお前を苦しめてしまってすまなかった……」


畳に額がつくくらい頭を下げたお父さんは、かつて暴力をふるっていたとは思えないくらい、小さく見えた。


「あの……

出来ればお母さんにも出席してもらいたいんですけど、居場所とかわかりますか?」


私は思いきってそう聞いてみた。


お父さんは驚いたように私の顔を見ていたけれど、ようやく観念したように言った。


「たぶん、実家に帰ってるんだと思う……

あいつは静岡の浜松にいるよ?

たまに手紙が来るから間違いないだろう……」


お父さんは立ち上がって手紙を引き出しから取り出すと、住所を紙に書き写して翔吾に渡してくれた。


私達はまた来るからと約束をして、実家を後にした。


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