夢の欠片
「悪いけど、今さらお母さんに側にいて欲しいなんて思ってないし、あの人と暮らすの……私は嫌だから」


母の考えには全く同調できなかった。


今まで一度も母の男関係のことには口を出さなかったけれど、今回ははっきりと言わせてもらう。


予想外な私の反応に、母は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして驚きを隠せないでいた。


何も言わずに下唇を噛んで、何か言いたげに私を見つめる母に、私はもう一度通告する。


「そういうことだから……

お母さんがあの人と結婚するなら私は出ていくし、もし私にいて欲しいならあの人に出ていってもらって?」


そう言った瞬間、母の顔がクシャッと歪んだ。


泣き出す一歩手前みたいな顔。


悩めばいいんだ。


どっちを取るのか考えればいい。


私はいつだって母の選択には従ってきたんだから……


たまには母が私の選択に翻弄されたって罰は当たらない。


涙を堪えるようにその場に立ち尽くす母を、私はそのまま声もかけずに目の前の襖をピシャッと閉めて遮断した。



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