夢の欠片
「あの……えっと……ね?

夏休みの間だけでいいの

ただ家を出てきたんじゃなくて、目的があって……

ちゃんと2学期からは家に戻って学校にも行くつもりだし、お母さんにも置き手紙してきたから……」


じっと私の目を見つめながら話を聞いていた翔吾は、ふぅ……と溜め息をついて黙ったまま考え込んでいる。


私は翔吾が何て答えるのかが不安で、上目遣いに泣きそうな顔で見つめていた。


もし翔吾が承諾してくれなかったら、この先どうしよう。


でも今さら家に戻るなんて出来ない。


ダメならマンガ喫茶とかで過ごすしかないかな?


そんなことを頭でいろいろ考えていると、ようやく翔吾が口を開いた。


「お前さ……男の一人暮らしのうちに泊まるって、どういうことかわかってんの?」


考えていたことと全然違うことを質問されて、私は動揺を隠せなかった。


「えっ……?

でっ……でも、翔吾は私のこと妹みたいって言ってくれたし……

さっきも中学生には手を出さないって……」


慌ててそう言いながら翔吾を見ると、肘をついた手に顎を乗せながら、少しだけ色っぽい目をして私を見た。


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