モカブラウンの鍵【完結】
「父さんが急に帰ってくることはないよ。あの家は最初、姉ちゃんたちが住む予定だったんだ。今の住んでいるマンションの方が会社から近いからって、その話がなくなったんだよ。

渋々、俺が住んでるの。その代わり、父さんが帰ってくるときは事前に連絡を絶対条件にしてるから」


それを話しても、まだ納得していない感じでサラダを食べている。

レタスやトマトをチビチビと食べて、伏し目がちになった。


「でも、もし万が一って場合もあるし、3つも年上の私が彼女なんて」

「父さんには奈央美のこと言ってあるよ」

「ええ?」と、目を見開いて、こっちを見た。

「ごめん。ちゃんと言ってなくて。職場に見合い話をやたら持ってくる人が居るらしいんだ。だから、1回だけお見合いしてくれって、2週間前ぐらいに電話で言われたんだよ。そのときに話したんだ」

話を聞きながら、奈央美が不安そうな顔をする。


「お父さん、なんて言ってた?」

「自力でいい人が見つかってよかったな。仲良くやれよ、だって」

「それだけ?」

「うん。年のことは気にしなくていいから。俺の母さん、父さんより5つ上だったんだよ」

「え? そうなの?」と奈央美が目を丸くして言った。

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