モカブラウンの鍵【完結】
シンクの中に残った皿を洗うため、奈央美の背を向けた。


「そうだよ。中野先輩は大学生の頃、付き合ってたよ」

「そう」

奈央美の顔も見ずに答えた。


「言いたいことあるなら言えばいいんじゃない」

奈央美の方を見ると、どこか呆れかえってるような顔だった。


「別に、もうないよ。元彼だってわかったし」

キッチンへ行こうとすると、腕を掴まれた。


「言いたいことあるんでしょ」

その言葉に「ない!」と、無駄に大きい声で言ってしまう。


「何で私が中野先輩のこと黙ってたか、わかる?」

俺の腕を掴んだまま、見上げてくる奈央美が強い口調で言ってきた。


「なんでだよ」

「涼太、私が中野先輩の名前を出すたび、仕事で一緒にいるのを見るたび、すごく嫌そうな顔してるんだよ」


隠してても出ててたのか。

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