モカブラウンの鍵【完結】
「佐伯奈央美さん。

俺と、杉山涼太と結婚してください。


俺と結婚していいと思うなら、右手にある鍵を、

結婚できないと思うなら、左手にある鍵を取ってください」


俺は頭を下げて、目をつぶっていた。

右手と左手の指先からぶら下がる鍵と動物。


風の音しか聞こえない時間をひたすら耐える。

両方の指先からキーホルダーが消えた。

びっくりして、顔を上げる。

奈央美は2つのキーホルダーを目の高さにまで上げていた。


「奈央美?」


「ねえ、普通はプロポーズの時って、婚約指輪くれるんじゃないの? 私、プロポーズのときに、好きな人から指輪を填めてもらうのが夢だったんだけど」


「え、それって」


奈央美は自分と同じ顔をしたテディベアのキーホルダーを俺の前にかざした。

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