モカブラウンの鍵【完結】
「しょうがない。もう一回、婚約指輪ありでプロポーズしてね」


俺はテディベアのキーホルダーを受け取った。

奈央美はもう1つのキーホルダーを揺らしている。


「黒のポメラニアンか。涼太に似てるね、この子」

俺の顔とポメラニアンを見比べて言った。


「似てないよ。俺の方が目が大きいよ」

「私は賢い顔をしてるって褒めたのに」

俺たちは同時に吹き出した。


「涼太、ごめんなさい。私も酷いこと言った。自分が隠し事をしたのも、年のことも、自分の判断でそうしたのに、全部、涼太のせいにした。

年の差はどうやったて縮められない。でも、そのせいで起こる嫌なことや苦しいことは、ちゃんと話していこう」

「ああ、そうしよう。隠し事は止めよう。どんなに恥ずかしい感情も見せていこう。俺たちならお互いのどんな面だって、受け止めていけるよ」

「うん」


鍵をしまい、ポケットから小さいぬいぐるを出す。

モカブラウン色のテディベア。

キーホルダーのテディベアをそのまま大きくしたようなデザイン。


奈央美が不思議そうに、そのテディベアを見ている。

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