Turncoat‐抱きしめられて‐
 

ドアを開けると、目の前には人が立っていた。

彼は、たしか斜め向かいに座ってたーー。


「ごめん、ちょっと通るね」


私は愛想笑いをしながら彼の前を横切ろうとした、その時だった。


「っっ!?」


一瞬何が起きたか分からなかったけど、この身体に感じる圧迫感に『私は今、誰かに抱かれている』事だけは理解できた。


「ねぇ、誰からの連絡待ってるの?」


「!!?」


ドキリとした。彼の声が、まるで私の全てを見透かしているような気がして。


「ずっと気にしてたよね、ケータイ。もしかして彼氏?」
 
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