臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
嫌がって泣きそうな顔をした麻由子が視界に入った。

呑気にトイレに入っている場合ではない。


「おい、佐久間。離せよ」


航平は佐久間の肩を掴んだ。佐久間はビクッとして、振り返った。

航平は涙目になっている麻由子を見て、顔をしかめる。


「速水さん…」


航平の登場にびっくりした佐久間は麻由子の頬に置いていた両手を離す。


「麻由子ちゃん、嫌がってるじゃないか?何してるんだよ」

「何って…あの、藤野を誘っていたんです。一緒に帰ろうと思って。なあ?」


佐久間は自分が勝手にしているのではなくて合意の上なんだと、麻由子に同意を求める。


麻由子は怯えていて、弱々しく首を横に振る。

航平の胸に飛び込みたい気分だった。
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