臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
佐久間は二人が歩き出すのを見て、「チッ」と舌打ちした。舌打ちは自分の評価を下げるというのに分かっていない。


「ありがとうございます」


会社まであと僅かの距離になり、麻由子は繋がれていた手を離した。

既に何人かの社員に手を繋いで歩く姿を怪訝な顔で見られていた。特に女性社員の視線を痛く感じていた。

航平は人の目を全然気にしていないが、麻由子は気にするし、体が小さくなっていた。


「ううん。大丈夫だった?」

「はい」

「今度から改札口で待ち合わせようか?」


少しでも危険から遠ざけるべきだと判断した上での提案だ。


「え、でも、大丈夫ですよ。ここまで近いですし」

「少しでも心配なんだよ。明日から改札口で待ってるから。じゃ」


航平は少し強引に言い切って、ちょうど来た営業課長に挨拶をした。


麻由子はまたもやぼんやり眺めていた。
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