臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
社内でそんなことされるのは初めてで、ドキッとした。会社までと会社から繋ぐことはしているけど、社内ではけじめとして、そういうことはしないでいた。

特に口に出すことはしていないが、二人の間では暗黙の了解となっているはずだ。

航平は握る手を離さないで、一歩麻由子に近付く。


「今夜泊まりに行っていい?」

「はい、いいですけど、何か?」

「ありがとう。またね」


麻由子の了解を得た航平は頬に軽くキスをして、営業課に戻って行った。


麻由子は頬に手を当て、爽やかに歩いて行く航平の後ろ姿を見て、しばらくボーッとしていた。


社内で手を繋ぐのも初めてなら、キスをされるのも初めてだった。

熱くなった顔を手でパタパタと仰ぎながら、エレベーターに向かった。


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