臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
それから一週間後、正式な辞令が発表される。


回ってきた社内報に麻由子は千尋と並んで目を通す。

春には多くの社員が異動する。
その中に航平の名前を見付けた。配属先は知らされていた通り、札幌支社である。

前もって知っていても、その文字を見て手が震えた。

航平の言ったことは嘘だとは思ってはいなかったが、やっぱり本当なんだと思い知らされえる。


「麻由子、大丈夫?」


付き合ってまだ間もない二人が遠距離恋愛になることを、千尋も心配して、震える手を握りしめる。


「うん、大丈夫だよ」


大丈夫じゃないけど、大丈夫と思い込まないと不安な気持ちに押し潰されそうになった。

< 231 / 255 >

この作品をシェア

pagetop