カノンとあいつ
ふと見上げると、頭上には、何万もの光を湛えた満天の星空が……。
えっ、なに?!
隙間なく瞬く星屑は、パノラマの夜空に七色の河を渡し、光が織り成す闇へのコントラストに、全身が無重力の方向へと吸い込まれてゆく。
そう…
准は………
もう何処にも居ないんだ………。
―― 今、目を閉じて、星々の荘厳な静けさに耳を研ぎ澄ませる。
じっとして、じっとして…………
そっとして…………。
やがて、果てし無い星空が、一斉にあの二長調を奏で始める……。
妖精の羽根が紡ぐ、艶やかで悲しい宴。
「准……聴こえる?」
「カノンだよ?」
「もう、本当に会えないんだよ?」
「バイバイ…………准!」
やがてバイオリンのきらびやかな旋律が幾重にも重なり始め、私達の悲しみも歓びも、切なさも愛しさも…、全部全部、優しく包み込もうとする………。