カノンとあいつ
「あなたは私とずっと一緒に居てくれるって言った!
……そうだよね?」
なんで?
「結婚したら女の子が欲しいって………
名前は僕が付けるんだって………」
私には未来がはっきりと見えたの……
そこには…そう、この子だったわ?
准も私もこの子の側でいっぱい笑ってるの。
だって………
「この子はこんなに准の事が好きなのよ!?」
ねぇ、違うの?
「准にパパになってほしかったんだよ!?」
黙ったまま首を垂れて、女の子の髪を慈しむように撫でながら、瞳に浮かべた涙は今にも零れ落ちそうに………
─── 時間だけが、あなたを見極めようと、厳かな沈黙を横たえている。
口角に悲しく浮かべた微笑みを守ろうとする余り、貝を作る女の子の頭を咄嗟に胸に引き寄せようとしたその刹那………
准の狼狽えた瞳から涙が溢れ、中空に幾つもの白い光が零れ落ちる。
私の、ようやく塞き止めていた涙腺はたった今潰え始め、痙攣を始める横隔膜に、上ずった声の欠片さえもが、力無く漏れ出そうとする悲鳴の方へと忽(たちま)ち取り込まれてゆく。