恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】





「あれってさ、何だったの? 今でもよくわからないんだけど……」


と聞いた花澄だったが。

環はすぐににこやかな笑みを浮かべ、口を開いた。

その完璧にして冷やかな笑顔。

はっと背筋を伸ばした花澄に、環は馬鹿丁寧な口調で言う。


「お嬢様。枇杷は学名をEriobotrya japonicaと言い、こう見えてバラ科の植物なのでございます。もともと古来の日本で……」

「……ってあんた、人の話聞いてる!?」


と目を剥いた花澄だったが。

環がこっそりと、花澄にしか見えないようにつんつんと玄関の方を指差した。

……見ると、

祖母の清美が、こちらの方へと歩いてくるのが見える。



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