恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



「明日が休みなら、もうちょっと遊べるんだけどな~……」


雪也は夜空を見上げながら、ぼやくように言う。

……晴れ渡った夜空にぽっかりと浮かんでいる、上弦の月。

まるで雪也のように、清く澄み渡った美しい月。

胸に湧き上がる淡い想いを感じながら、花澄は雪也を横から見上げた。


「雪くん、今日は誘ってくれてありがとう。楽しかったよ」

「いや、楽しかったのは俺の方。ありがとね、花澄ちゃん」


雪也はにこりと微笑んで言う。

……その、優しく大人びた微笑み。

花澄はドキドキしながら、頬を染めて口を開いた。


「雪くんはさ、本当に大人だよね。遊ぶとこいろいろ知ってるし、優しいし……」


と、花澄が言うと。

雪也はくすりと笑い、花澄を見下ろした。


「あまり褒められるとこそばゆいな。……俺、こう見えて結構腹黒いんだよ? 花澄ちゃんの前では見せないだけでさ」

「えっ、そんなことないよ。雪くんは……」



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