恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



雪也のトラウマと花澄のトラウマは同じではないが、根底に流れているものは同じだ。

『他人を傷つけたくない』、『他人にはより良い自分を見せたい』という思い。

それはある意味、自意識の強さとも言える。

そう、まるで合わせ鏡のように……自分と花澄は精神構造が良く似ている。

自分たちはいわば、互いの心を映しだす鏡のような存在だ。


雪也はあれから自分の心をコントロールする術を少しずつ身に付けていった。

完璧な『いい人』である必要はないと知り、適度に力を抜くことを覚えた。

……完璧ではない自分でも、この世の中でただ一人、花澄だけは受け入れてくれる。

そのことが雪也に自信を与え、勇気づけた。

しかし、花澄は……。


どうすれば、花澄があのトラウマから解放されるのか……。

まだ、わからない。

けれどいつか、花澄が自分の心の傷を癒してくれたように、自分も花澄の心の傷を癒したい。

そして……彼女にとって、かけがえのないただ一人の人間になりたい。

彼女とともに、人生を歩いていきたい。

彼女の隣に立つのは、自分だけでありたい……。


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