恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
「……なんか可愛いね、その寝癖」
ふわり、と雪也の手が髪に触れた。
花澄の髪を優しく撫でる、その指先。
はっと顔を上げた花澄に雪也は目を細めて笑いかける。
心を溶かすようなその微笑みに、胸がドキッと高鳴る。
「ホールで待ってるから支度が終わったらおいで。あ、朝は洋食と和食、どっちがいい?」
「……えっと、和食で」
「了解」
雪也はぽんぽんと軽く花澄の頭を叩き、ホールの方へと歩いていく。
……やはり、雪也は大人だ。
花澄はその背をしばらくぼーっと見つめた後、慌てて支度を始めた。