恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



環は屋敷の家計を考え、敷地内で調達できるものは極力敷地内から調達しようとする。

その堅実さが、執事の仕事を任された理由の一つでもある。

そして環が作る料理は、どれも美味しい。

タラの芽やフキなど、季節の食材もバランス良く取り入れるので、環の料理は祖母の清美にも好評だ。


「お嬢様。飲み物は緑茶になさいますか? それともコーヒーになさいますか?」

「……コーヒーをお願い」

「畏まりました」


環は一礼し、キッチンの方へと踵を返した。

環は祖母の清美の前では、使用人として完璧な所作で花澄に接する。

なので花澄も正直、少し構えてしまうところがある。

……仕方がないことではあるが。

やがて、環がコーヒーが載った盆を持って花澄の横に静かに歩み寄った。

手慣れた様子でカップを花澄の前に置く。

コーヒーは父の繁次や清美の好みに合わせ、酸味が多い銘柄の豆を使っている。



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