恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



奨学金が取れれば自分は来年にはここを出て行く。

……あと、半年。

半年我慢すれば、花澄から離れることができる。

けれど、もう……想いは限界まで溢れ、零れそうになっている。

少し触れられただけで、堰は崩れ、想いは花澄に向かって一直線に流れ出すだろう。


――――離れるしか、ない……。


『花澄に関しては、……何もかもお前が面倒を見なければいけないというわけじゃない。もっと手を抜いてもいいのだよ?』


いつかの清美の言葉。

ひょっとしたら、清美は環の気持ちに気付いていたのかもしれない。

これ以上近付いたら辛くなるということを、遠まわしに環に告げようとしていたのかもしれない。


花澄の身の回りの世話は、全て自分がしたい。

花澄に尽くすのは自分だけでありたい。

そう思う気持ちは変わらない。

しかし……。


「離れるしかない、か……」


環は呟き、力なく天井を振り仰いだ……。


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