恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】

3.すぐそこにある危機




翌日の放課後。

明後日に模試を控え、花澄は17時過ぎまで図書室で勉強に没頭していた。

今日は知奈は用事があるらしく、先に下校した。


――――17:00。

花澄は図書室を出、生徒会室に続く廊下を歩いていた。

今日中に生徒会に提出しなければならない書類があるためだ。

模試を週末に控え、ほとんどの生徒は既に帰宅し、廊下はしーんと静まり返っている。

自分の足音が、カツン、カツンと廊下に響く。

……しかし、その時。

自分の足音に続いて、誰かの足音がカツン、と響くことに花澄は気が付いた。


「……っ……」


足音は、しだいに近づいてくる。

花澄は背を強張らせ、動じていない風を装ってゆっくりと歩いた。

……あの廊下の角を曲がったら、ダッシュで逃げよう。

花澄のこめかみから冷や汗が流れ落ちる。

花澄は一歩、また一歩と角へ向かって歩いていった。

そして角を曲がろうとした――――その時。


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