恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
花澄はモゴモゴと言った。
雪也のことを美鈴の前で下手に話題にするのは危険だ。
と思った花澄の内心を知ってか知らずか、美鈴はふいに足を止め、花澄に向き直った。
「そういえば、花澄。私と雪也さんの正式婚約の件、聞いた?」
「……」
花澄は息を飲み、俯いた。
聞いたと言えば聞いたのだが、あれは盗み聞きだったのでちゃんと聞いたわけではない。
黙り込んだ花澄を美鈴は正面からじっと見据え、口を開く。
「高校を卒業したら、うちの母から雪也さんのお母様に、雪也さんとの正式婚約を申し入れるつもりだから」
「……そう、なんだ」
「私と雪也さんが婚約すれば、あんたも晴れてお役御免ってわけよ。ま、賢吾さんとあんたっていうのも考えられないわけじゃないけど……」
そもそも美鈴の頭の中には、花澄と雪也が、という可能性はないらしい。
花澄が雪也に想いを抱いているなど想像もしていないだろう。