恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
プランター花壇の前で、環が園芸部員の女の子達に囲まれている。
環は花の苗を片手に園芸部員達を見回し、何やら説明している。
「……これはノースポールだ。フランスギクの一種で、かなり強健だ。他の花を近くに植えると、駆逐してしまう可能性がある」
「……ということは、単体で植えた方がいいですか?」
「植え方にもよるが、その方が無難だろうな」
園芸部員の女の子達は、環の言葉に感心したように頷いている。
中には、ぽうっとした表情で環を見つめている女の子もいる。
その中の一人が、環を見上げて口を開いた。
「相沢先輩がこんなにお花に詳しいなんて知りませんでした。お花が趣味なんですか?」
お花が趣味って……。
無言で見つめる花澄の視線の先で、環は冷静な口調で言う。
「いや、趣味というよりは仕事だ」
「……え? 仕事?」
「あと、植え付ける時は適度に根をほぐすこと。そして植えつけたら肥料を忘れるな」