恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



ふと玄関の脇を見ると、花壇の隅に自生した曼珠沙華が夜風に揺れている。

曼珠沙華の季節が終われば、冬が来る。

夏が過ぎ、秋が過ぎ……そして、全てが凍る冬が来る。

この想いも、冬の雪の下で眠らせ、忘れてしまえれば……

いつか、自分にも暖かい春がやってくるだろうか……。


明日は雨になるのだろうか、夜気が湿気を含んでいる。

花澄は曼珠沙華を眺めながらアプローチを歩いていった。


……と、玄関に入ろうとした時。


「……遅かったな」


柱の陰から声を掛けられ、花澄はびくっと足を止めた。

……見ると。

紫檀の柱に、環が腕を組んで寄りかかっている。

環は身を起こし、花澄を見下ろした。


「どこに行ってた? こんな時間まで……」

「どこって……」



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