恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】

6.家族じゃない




22:30。


雪也に屋敷の門の前まで送ってもらった花澄は、雪也に礼を言いその背を見送った後、ゆっくりと玄関の方へと歩き出した。

……まだ、夢の中にいるみたいだ……。

なんだか、足がふわふわする。

あのコンビニからここまで、どうやって帰って来たのか自分でも不思議だ。


でも……。

いい想い出が、できた。

雪也との最後の想い出。

きらきら輝く宝石のようなそれを、花澄は切ない痛みと共に胸の奥へとしまい込んだ。

……あの夏の別荘での想い出と、今日の想い出。

叶うことはなくても、雪也を好きになれたことは幸せだった。



< 291 / 476 >

この作品をシェア

pagetop