恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



情熱を伝えるかのような、あの熱い唇。

自分にとっても、恐らく環にとっても……あのキスは、ファーストキスだ。

初めての口づけをあんな風に奪われたのに、なぜか嫌悪感は感じない。

それどころか、思い出すだけでじわっと体が熱くなる。

……唇から伝わってきた、環の想い。

あの切なげな瞳に、誘うような艶のある瞳に、心が揺れてしまう。


ずっと心の中で温めてきた、雪也への想い。

雪也を想うと淡く温かい気持ちが胸に広がる。

けれど環を想うと、突然熱い泉に突き落とされたかのような、容赦ない熱が体を巡る。

そこには淡い温かさなど微塵もない。

あるのは、炎のような――――身を焼き尽くすような、激しさだけだ。


環の激しさが、あの情熱が、自分を変えてしまったのだろうか……。

キスされ、抱きしめられて……

初めての感覚に心が引きずられているのだろうか……。


「ちょっとあんた! 目の焦点が合ってないよ!?」

「……え」

「悪いことは言わない。あんた、今日は早く帰った方がいいよ? 絶対ヘンだって!」


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