恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



窓の向こうに、人影が見えた。

その人影はこちらを一瞥して通り過ぎようとした……が、カッとその目を見開き、再びこちらを見る。

――――翳りを帯びた、榛色の瞳。

忘れもしない、その瞳……。



「環っっ!!」



渾身の力で、花澄は叫んだ。

環は驚愕の表情で二人を見た後、さっとその瞳に怒りを漲らせた。

そのまま扉の方まで回ってくる……かと思いきや。


窓の向こうで、環が細長い何かを振り上げる。

息を飲んだ花澄と三浦の目前で、環はそれを窓に向かって勢いよく振り下ろした。


ガシャーン、という音とともに、窓ガラスが破片となって散らばる。


驚く花澄の目の前で、環はひらりと窓を超え、中に入ってきた。

その手にあるのは……。

外に置いてあった、ソフトボール用のバットだ。


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