恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



環は三浦を見下ろすと、その美しい目を歪めて嗤った。

――――その瞳によぎる、鮮烈な怒り。

その酷薄な表情に、三浦だけでなく花澄も凍りついたように固まった。

環はその表情のまま、バットを三浦の肩に向かって容赦なく振り下ろした。


「ぐあっ……!」


肩を打ち据えられ、三浦はマットの横へと転がった。

花澄は固まったままその光景を見つめていた。

環は仁王のように三浦の足を踏むと、再びバットを振り上げた。

そのとき。


「花澄ちゃん!?」


バンと扉が開く音がし、雪也が戸口に姿を現した。

室内の様子を見、その目を驚愕で見開く。

三浦は肩を押さえていたが、その拍子にすかさず立ち上がり、扉の方へと走り出した。

外へと飛び出した三浦を、雪也が踵を返してすかさず追いかける。


「待てっっ!!」


二人の気配が外へと消えていく。

花澄は呆然とその光景を見つめていた……。


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