恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】




「……大丈夫だ、花澄。落ち着け」

「……っ、……っく……」


安心したせいか、さらに涙が溢れてくる。

優しい感触に、触れる手先の温かさに、強張っていた心がゆっくりと溶けていく。

ふと視線を流すと、割れたガラスが目に入る。

……まずい。

花澄は慌てて環の手を掴んだ。


「環、……奨学金が……っ」

「そんなことは気にするな。……今は、何も考えるな」


環は強い声で言い、花澄の唇にそっと優しい口づけを落とした。

まるで消毒するかのように、角度を変えて何度も口づけられる。


――――甘い、唇……


花澄はぼうっとした頭で環の唇を受けていた。

……どうして環の唇は、こんなに優しいのだろう。

どうして自分は、環の唇を何の抵抗もなしに受け入れられるのだろう……。


幼馴染だからなのだろうか、それとも……。


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