恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】



「……っ、花澄……」


環は手早く花澄の制服のボタンを閉め、スカートを整えた。

そのまま花澄の背に手を回し、そっと上体を起こさせる。

……三浦とは全く違う、気遣いに満ちた指先。

肌越しに伝わる、優しい温かさ。

心を落ち着かせる、甘い花の香り……。


震える肩に、そっと環の手が触れる。


花澄は三浦の唇の感触を思い出し、思わず口元を覆った。

……気持ち悪かった。

あの感触を思い出すと、背筋が震える。


「……花澄」

「……っ……」

「花澄」


環の手が優しく、花澄の手を掴む。

宥めるように、安心させるように、環の指先が花澄の髪や頬に触れる。


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