恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】
「そういえば。雪くんはどこの大学受けるの?」
「今のところ、京大の工学部を受ける予定。炭素素材とか、先端材料の開発について勉強したいんだ。繊維産業も今は多角化してるからね」
迷いのない口調で雪也は言う。
なるほど、と花澄は頷いた。
将来のことを考え、雪也はそういう道を選んだのだろう。
しかし……京都となると、鎌倉とは離れてしまう。
「京都かぁ……。寂しくなるなー……」
「4年間だけだからね。夏休みとかには戻ってくるよ」
雪也はその切れ込みの深い二重の目を細め、言う。
雪也の周りにはいつも清らかで温かい空気が満ちている。
ずっと昔から花澄の心の一番優しい場所にいた、初恋の人。
見上げた花澄に、雪也はいつもと違う強い光を瞳に浮かべて言った。
「花澄ちゃん。……年が明けたら、君に話しておきたいことがあるんだ」
「……え?」
「俺達の将来について。君は……」
と、雪也が言いかけたとき。
プルルルと花澄の携帯が鳴った。